研究概要 |
植物の酸性条件下で発現するアルミニウム(Al)ストレスに対する応答反応について調べた。膜レベルの応答反応としてはAlストレスにより原形値膜にAlが結合し,逆に膜からCaが失なわれることにより,H^+-ATPasl活性が顕著に減少することを見い出した。一方,Alストレスにより液胞膜のATPおよびPPi依存のH^+ポンプの活性が上昇し,その過程にABAが関与し,抗体を用いた実験からポンプタンパク質の合成が起っていることを明らかにした。さらにAl耐性を異にするコムギを用い負荷したK^+の根からの排出を測定し,感受性種では負荷したK^+の低pHにおける排出が大きいことが分った。K^+の排出はH^+の流入量およびH^+ポンプの作動,それらに連動する膜電位の恒常性の維持に深くかかわっている。感受性種ではAlによるポンプの障害の受け方が大きかった。またK^+の排出に関与すると考えられるK^+チャンネルのAlによる阻害の受け方も大きかった。 一方,タバコ培養細胞を用いて一過性のAl耐性誘導について検討した。すなわち細胞をリン酸欠乏条件におくと,その後に低pH条件下でAlストレスを加えても耐性を示すことが明らかになった。Alの吸収とAlによる成育阻害は対数期の細胞においてのみ認められ,Alの細胞1ヶ当りの結合分子数は2.3×10^<11>であることを明らかにした。耐性誘導細胞ではAlの細胞外への排出系が高まっていた。また耐性細胞では45KDと21KDのタンパクの発現が増加していた。これらタンパクの発現に関わる遺伝子の単離をmRNAからcDNAを調製し,プローブを用いたディファレンシャルハイブリダイゼーション実験から耐性発現と関連する可能性のある数個のポジィティブクローンを得,現在,それらの確認と解析を継続中である。
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