研究概要 |
塩生植物オカヒジキ(Solsola komarovi)にはATPや分解活性をもつ酵素(ATPase)が膜結合型(ME)および遊離型(FE)として存在し,その存在比は4:96であった。このMEおよびFEをそれぞれ分離精製し,性質を比較した。すなわち,MEはショ糖密度勾配遠心および新しく開発したDEAE-ToyopearlカラムHPLCを用いて精製し,同時にMEが形質膜画分に存在することを明らかにした。また,FEはDEAE-ToyopearlカラムおよびTskgelカラムにより精製した。精製酵素について基質特異性を調べたところ,ME、FEともp-nitrophenylphosphateついでADP,ATPをよく分解した。また,両酵素は各種塩による活性促進のパターンが類似していたが,FEでは特にMgCl_2+KCl,MgCl_2+NaCl,CaCl_2による大きな活性 促進が認められた。ME,FEの至適phはそれぞれ5.7,6.3で,互いにやや異なっていた。両酵素はともにmolybdate,ついでvanadateによって強く阻害されたが,特にFEはmolybdateによって完全に阻害された。また,両酵素は強い耐塩性を示し、MEの活性は高濃度のNaClの存在下むしろ上昇した。以上,本酵素は従来報告されているATPaseおよびacid phosphataseの両性質を共有しているが,どちらかと云えばacid phosphataseに近似した酵素であると云える。オカヒジキに存在するATP分解活性の約95%は本酵素に由来していた。他方,中生植物の大豆および塩感受性植物のキュウリについて調べ,何れも本酵素をもっていることが分った。しかし,塩抵抗性の弱い植物ほどその存在量が少なく,反対に従来型ATPaseが増加していた。次に、ME活性と膜脂質との関連をみるため,膜を 脱脂し大豆リン脂質成分をリポソームとして添加し,活性回復を調べた。レシチンが最も高い活性回復を示し,これにイノシトールリン脂質を混合するとさらに高い活性回復が認められた。
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