研究概要 |
申請者は、放線菌、大腸菌、緑膿菌、ラン藻などの多くの真正細菌において複数個の主要シグマ因子様遺伝子が存在することを発見し、それらの遺伝子ならびに遺伝子産物の構造と機能に関して解析を進めている本年度明らかになったことは、以下のように要約することができる。 (1)放線菌Streptomyces coelicolor A3(2)株の4つのrpoD相同遺伝子群(hrdA,hrdB,hrdC,hrdD)についてmRNAレベルでの発現の様相を解析した結果、気中菌糸や胞子の形成などの形態分化の起こる固体培地での培養においては、基底菌糸状態ではhrdBの発現が最も強く、hrdDが中程度に発現していること、気中菌糸ができる時期になるとhrdBの発現が減少するがhrdDの発現は胞子形成期まで続くことが分かった。一方、分化の起こらない液体培養の条件ではhrdBとhrdDが培養時期にかかわらず高く発現をしていた。これらのことからhrd遺伝子は、放線菌の細胞フェ-ズに関連した発現をしていると結論される。(2)放線菌より、RNAポリメラ-ゼを部分精製したところ、精製過程においてシグマ因子が離脱しコア酵素となっいることが明らかとなった。このコア酵素を用いて、大腸菌で多量発現したHrdB蛋白質がシグマ因子活性を持つことを示した(3)単細胞性のラン藻、Synechococcus PCC7942よりRNAポリメラ-ゼを精製し、α、β、β^ー,γの4つのサブユニットと52Kdの蛋白質からなることを明らかにした。SDSーPAGEによって分離した52Kd蛋白質のアミノ酸配列を調べたところrpoD1遺伝子から予想される蛋白質の配列と一致した。したがってSynechococcus PCC7942の4つのrpoD相同遺伝子の中でrpoD1が主要シグマ因子と機能的に相同であると結論される。
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