研究概要 |
緑膿菌Pseudomonas aeruginosaは、基本的には好気性菌であるが、酵素非存在下においても異化的硝酸呼吸(脱窒)により生育が可能である。また例外的にアルギニン存在下、呼吸系を用いないで生育することも可能なことが知られている。筆者らは既に、本菌の亜硝酸還元酵素系の構成要素であるニトレ-トレダクタ-ゼとシトクロムCが染色体上に隣接していることを報告している(FEBS Letters,261,196ー198,1990)。本年度の研究では、この両者がオペロンを形成していること、およびこのオペロン(denAB)の発現をコントロ-ルしている要因を明らかにすることを試みた。 まず、promoter prove vectorを用い、denAB近辺の様々なDNA断片のプロモ-タ-活性を調べたところ、denABは、オペロンを形成していること、さらには本オペロンは、嫌気的でかつ硝酸または亜硝酸存在下にのみ発現することが判明した(FEBS Letters,280,351ー353,1991)。さらに、Pseudomonasにおいてより効果的な発現ベクタ-を構築し(Agric.Biol.Chem.,55,2431ー2432,1991)、それを用いて嫌気的条件下、硝酸(亜硝酸)の存在の有無による発現の強さを調べた結果、denABは嫌気条件および硝酸(亜硝酸)の存在という少なくとも2段階の発現調節を受けていることが判明した(FEBS Letters,288,227ー228,1991)。 さらに本オペロンのプロモ-タ-領域にには、Pseudomonasや大腸菌で嫌気的状態で発現する遺伝子の上流に特異的な配列(ANR配列)が見出された。さらに、denAB下流同方向および上流逆方向にあらたなORFの存在が示唆された。現在これらの点についてさらに研究を進めている。
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