研究概要 |
C-P結合と解裂する有機化学的・生化学的反応,並びにC-P結合化合物の生理的機能は殆ど検討されていないのが現状である。そこで,微生物のC-P結合の生成と解裂に関与する酵素と遺伝子の性質を解析し,生来におけるC-P化合物の生理機能・代謝経路を明らかにすることを検討した。既に,C-P結合解裂酵素を有する数種の微生物を検索し,最も強いC-P結合解裂酵素活性を示した細菌E.aerogenes IFO12011から,本酵素の精裂およびその遺伝子のクローニングを行った。今年度は,酵素機能を遺伝子構造の解析を進めた。まず,酵素の性質を解析した結果,この酵素はC-P結合を有する化合物メチルホスホン酸(CH_3-(P))から無機リン酸の遊離を触媒したがメタンの生成は触媒しなかった。従って,この酵素はC-P lyaseではなく,C-P結合を加水分解的に切断するC-P hy-drolaseであると結論された。しかし,細胞レベルで活性を測定した結果,メタンの生成も検出されたので,この細菌はlyaseとhydolaseの両酵素を持つことが分かった。Lyaseが精製されなかった理由は,その活性が付いために,無機リン酸の測定では検出されなかったためと考えられる。精製した酵素は無機リン酸の生成に2種類のタンパク質〔E3(M.W.111KDa),E2(M.W.655KDa)〕を要求する。不安定なC-P結合を持つホスホノアセトアルデヒドを基質としてE3とE2の機能を解析したE3は単独でホスホノアセトアルデヒドから無機リンの遊離と触媒したが,E2にはその活性は認められなかった。従って安定なC-P結合の切断には,まず,E2によってC-P結合が不安定化され,次にE3がその不安定化されたC-P結合を切断することが明らかになった。クローニングした本酵素の遺伝子を含む25KbaのDNA断片について,本酵素遺伝子のサブクローニングによる最小領域の決定を続けたが,複雑過ぎたために機能領域の特定化までには至らなかった。
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