研究概要 |
減数分裂開始を正に調節する遺伝子としてIME2,SME2,およびSME3を単離した。IME2の転写は減数分裂初期に特異的であり,SME2とSME3の転写は栄養増殖期の静止期ですでに蓄積がみられた。SME2はIME1とIME2の転写には影響しないが,減数分裂後期遺伝子(SGA1)の転写を正に調節していること,また,SME3はIME1の転写を活性化することが判明した。グルコアミラーゼ遺伝子(STA1)の正の転写調節因子であるGAM1およびGAM3はIME1の転写にも必要であった。また,SUD1,GAM2,NIM1およびNIM2はIME2の転写を負に調節していることを明らかにした。以上の結果から,減数分裂開始を支配する転写調節カスケードのモデルを構築した。 IME2タンパクに特異的な抗体を用いて,IME2タンパクが核内に局存すること,およびプロテインキナーゼ活性をもつことを証明した。また,6つの酸性度の高いペプチドをもつカルボキシ末端のペプチドを欠失したIME2タンパクは,窒素源あるいはグルコースによる胞子形成阻害効果を部分的に解除することより,このC末端ペプチドは負の調節機能をもつことが示唆された。 減数分裂後期遺伝子(SGA1)の転写をIME2キナーゼがどのようなメカニズムで調節するのか調べた。SGA1遺伝子の5^1上流配列のなかに正(UAS)と負(NRE)の転写調節配列を見出した。UASはIME2によって調節されていないこと,NREを欠失するとSGA1の転写はIME2に依存せず発現することから,IME2キナーゼはNREを介した負の転写調節を解除することを明らかとした。ゲルシフト法により,UASおよびNREに結合するタンパクを同定した。
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