研究概要 |
1.既に報告者らによって決定されている3種の毒素について,立体構造が不明のまま残されていたのは脂肪酸の3位の水酸基の配置であった.今回,syringomycinを用いて,加水分解物から,脂肪酸を抽出し,MTPAエステルに誘導して,標品のDおよびLのものと比較することにより,その配置をD型と決定した.構造の類似性から,他の毒素についても同じD型と推定している.また,微量成分であるいくつかのsyringostatin類について,MS/MSの手法によって,構造を決定した. 2.3種の植物毒素について,ヤエナリより精製したmembrane ATPaseに対する作用を検討した.その結果,3種の毒素はいずれもrightsideーout型のATPaseでは見かけ上活性化したが,それは,基質であるATPをミセル内側の活性部位へ侵入させた結果と判断された.一方,これら毒素はinsideーout型のATPase,あるいは精製したATPaseには弱い阻害作用を示した.これらの結果から,毒素は界面活性剤型の毒性を示すものと判断した. 3. ^<31>PーNMRを用いて,ヤエナリ培養細胞へのsyringostatinの影響を調べた結果,本毒素は細胞内のpHを低下させた.これはATPaseが阻害された結果,それに連動するプロトンポンプが機能しなくなったためと考えられた. 4.Syringostatin生産菌あるいはsyringomycin生産菌を用いて,インタクトな植物に毒性を示す物質の精製法を検討した.この物質は,きわめて水溶性に富み,また,化学的に不安定な化合物で,精製がきわめて困難であった.今後さらに精製法を検討する必要がある.
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