研究概要 |
アブシジン酸(ABA)の代謝を防ぎ活性を高めるために,その8位と9位のメトキシ体とフルオロ体を合成し,活性を調べることを目的した。 メトキシ体は,ヒドロキシメチルジメチルシクロヘキサノンをメチル化後,側鎖の伸長と環部へのエノンの導入を行い合成した。HPLCで条件検討の結果,8体,9体ともChiralpakADカラムで光学分割できることを見出し,両者を(+)体と(-)体に分割した。キラル体の生理活性をレタス発芽,イネ第2葉鞘伸長,オオムギα-アミラーゼ誘導の各試験を用いて調べた。(+)-8-メトキシ体は(+)-ABAに比べイネの伸長を約3倍強く阻害した。(+)-9-Xトキシ体は,レタスとα-アミラーゼ試験で各々(+)-ABAの約10倍と2倍強い阻害活性を示した。ABAよりも活性の強いアナログはこれらが初めてである。8体だけでなく,代謝されない側のメチル基を改変した9体も高い活性を示したことは,メトキシ基が代謝だけでなく,受容体との親和性に影響していることを示唆している。(-)体は(+)体の1/10-1/400の活性しか示さず,メトキシ体の(+)体と(-)体の活性の差はABAの場合よりも顕著であった。このことも,メトキシ体の方がABAよりも受容体の立体要求性に合致していることを示唆している。 モノフルオロおよびジフルオロ体を得るために,上記アルコールとそのアルデヒド体のDASTによるフルオロ化を試みた。アルコールのフルオロ化は困難であったが,シスジメチル体をエーテル中-80゚Cで反応することによってモノフルオロ体を30%の収率で得ることができた。アルデヒド体のジフルオロ化はジクロロメタン中約40%の収率で容易に進行した。これによってフルオロ体の合成ルートを確立できた。 今後,フルオロ体の合成を完成させ,メトキシ体とあわせて,気孔閉鎖や耐寒性試験を行う計画である。
|