研究概要 |
ポーラスポリマービーズを充填したカラムを用いる食品の風味成分の直接カラム濃縮法を新たに開発し、従来法(減圧連続蒸留抽出法;SDE法)との比較しながら緑茶および醤油の風味成分の解析を行った。 1.緑茶香気濃縮物の成分組成とその香りに及ぼす前処理法の影響 直接カラム濃縮法により調製されたにおい濃縮物は、典型的な緑茶の風味を強く連想させるものであったのに対し、SDE法により得られたにおい濃縮物は苦みを強く連想させ木材様のにおいであった。同定された92成分中45成分は緑茶香気成分として始めて検出されたものである。92成分中30成分はSDE法において5倍以上の濃度を示したが、これは緑茶中に配糖体として存在する成分が蒸留中に加水分解したものと考えられる。一方、製茶工程の「火入れ」により生成したと考えられる3-ethyl-4-methyl-1H-pyrrole-2,5-dione,5,6,7,7a-trimethy1-2(4H)-benzofuranone,2H-1-benzopyran-2-oneneはSDE法で1/5以下に減少した。以上要するに、カラム濃縮法によると我々が通常緑茶を飲むときと同じ方法で風味成分を濃縮し得ることから、得られるにおい濃縮物は官脳的に非常に優れたものであった。 2.醤油の特徴香 特に塩辛味を連想させる風味成分に関する研究 直接カラム濃縮法によるにおい濃縮物は、SDE法では得ることの出来ない強烈な塩辛い風味を有する典型的な醤油の香りであった。200個以上のピークが検出され、うち78成分を同定した。次に、種々のクロマトグラフィーにより塩辛い風味を呈する画分を絞り込み、これを分取ガスクロマトグラフィーに供し目的とする塩辛い風味成分を特定した。GC-MS分析によりfurfurylalcohol,4-hydroxy-2-ethyl-5-methyl-3(2H)-furanoneと同定された。そこでこれらの化合物に対して官能評価を行ったところ、両者の間にはにおいの質に関する明瞭な相乗効果が認められ、等量混合物で最も強く塩辛い風味が認められた。
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