研究概要 |
大佐渡山地では,スギ林は海抜約700m以上の埴質な土壌母材の場所に分布し,霧の発生による高い空中湿度とあいまって湿性的な水分環境にあり,湿性鉄型ポドゾルや,乾性ポドゾル(地形的なもの)が分布していた。ヒバ林は海抜約700m以下のやや砂質で乾性的な土壌母材の場所に分布し,空中湿度はスギ林に比べてかなり低く,乾性弱ポドゾル化土壌が分布していた。ブナ林は金北山周辺の高海抜地に分布し,空中湿度はスギ林とヒバ林のほぼ中間で,土性や土壌の水分環境には明瞭な傾向が認められず,褐色森林土の高海抜型の土壌が分布していた。これらの3タイプの林分間では,ポドゾル化作用に伴う遊離酸化物や腐植の移動,土壌表層部(A0層,A層)の化学性などにかなり異なった傾向が認められた。 大佐渡山地の山毛欅ケ平山の西斜面に位置するスギと広葉樹の混交林において,大面積の固定調査区を設け,毎木調査と樹冠投影図の作成,枯死・切り株の位置やサイズの調査を行った。大佐渡山地では古くから樽材や炭材としてスギやイタヤカエデが抜き切りされており,その伐根の周辺にミズナラなどが多く生育していたことから,過去の人為の影響が現在の林分構造に大きく関係していることが示された。 大佐渡地域の3カ所から花粉分析用の試料を採取し,花粉分析と^<14>Cによる年代判定を行った。その結果,約200〜250年前にはツツジ科の低木とシダによって優占されていた場所が,現在はスギの天然林になっているところが見つかった。また,国仲平野の水田から採取した試料からは,過去1500年間の植生変遷の概略が把握され,約1000年前頃からの水田や畑地の拡大,約500年前頃からの周囲の森林の急速な開拓,さらに最近になっての植林の影響や二次林の形成が示された。
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