研究概要 |
適正な規模や配置に基づく林内路網が,森林を将来に渡って有効に利用していくために不可欠な手段であるということは言うまでもないが,その一方で,自然環境の維持・保全との不調和を生み出していることも事実である。なかでも,森林の風致・景観は,社会的・経済的諸活動に直接与える影響が少なかったために,その機能は過少評価されてきたと言えよう。しかしながら,社会生活の「量」から「質」への意識の変化は,森林風致・景観機能への正当な評価と具体化を促してきている。本研究は,森林の利用・行動空間におけるその風致・景観機能を最大限に発揮させることを目的とし,被視条件としての森林景観構成要素の判別と計量評価,被視ポテンシャルによる景観領域のゾーニングと森林景観空間のモデリング,さらに,林内路網計画や伐出計画と連係した伐出作業領域での森林景観の最適レイアウトを,電算機のグラフィック・シミュレーションによって解析することを目指した。本研究期間中に議論した具体的項目は,(I)階層化分析法(AHP)を導入した森林内景観構成要素の選好度評価と被視条件要素の判別,(II)デルファイ法による中・遠景的森林景観条件の評価,(III)被視条件ポテンシャルによる森林景観空間のモデリングと伐出作業領域のプレゼンテーションの三点である。 その結果,森林内外の被視条件としての景観選好性はAHP法やデルファイ法によりかなり適確に判定できること,被視条件因子の測地的なデータ処理により判別区域のゾーニングが行なえること,電算機のグラフィック技法により,路網配置や伐出作業方式と連係した森林景観評価が対話型の解析方式で実行できること,収穫作業計画と景観計画を同一軸で比較検討することが可能であること等の諸知見が得られた。
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