研究概要 |
樹木のさし木の生理活動の変化を発根との関係において追求した。実験材料とし高知大学に植えられている10年生スギ10産地の品種やクローン、また苗畑に植栽されている県内産スギ情英樹からのさし木とその親木について木部圧ポテンシャル(以下XPP)、含水率光合成速度などの面から調べた。その結果1)XPPの日変化に日出時に高く、その後回復して日入には日出時の値に近ずいた。日出時のXPPは発根している個体では-5-0barのものが大半を占め、カルス形成個体ではその割合は少なくなり、発根もカルス形成もない個体はその割合は極めて少なくなった。逆にXPPが低くなると未発根や未カルス形成個体の占める割合が多くなった。2)さし木の含水率は親木に比べ低く,時期的には春よりも秋にいくぶん多い傾向がみられた。3)含水率とXPPとの関係ではさし木の場合,10,12月にXPPが高くなるのは根系の発達が促進され,水分要求量は春先に比べ低くなると考えられた。親木では夜系が十分発達しているのでXPPは高く,時期による変動も少ないようであった。4)スギさし木のXPPの8月から12月までの変動値と発根率は8月から12月までにXPPが回復したクローンほど高い発根率を示す傾向がみられた。親木では3月から8月までのXPPの変動値と発根率の関係は変動値があまり下らなかったクローンほど高い発根率がみられた。これは蒸散量が増え,水ストレスが起りやすい夏,春からの水分状熊がよいクローンに発根率が高くなるのではないかと考えられた。5)さし木発根率と光合成速度の関係では発根している個体では光合成速度が20×10^<-3>μmol・g^<-1>・s^<-1>以上の割合が20%以上で,カルス形成個体では5%,発根もなく,カルスも形成しない個体ではわずかであった。0〜10×10^<-3>の範囲内では大部分が未発根で,カルス形成個体は80%,発根個体は50%以下になった。6)広葉樹もスギに似た水分特性がみられた。
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