研究概要 |
だぼ穴加工に代表される木材の穴あけ加工の自動化,省力化を押し進める上では,穴あけ工具(ビット)の摩耗あるいはチッピングなどのインプロセスモニタリング手法の確立は,重要な研究課題である。本研究では,上記のような観点から,切削音による方法に着目し,切削中に発生する切削音とビット摩耗量の関係を調査することによって,ビットの刃先摩耗状態のモニタリングの可能性を検討した。 実験では,パーティクルボードを対象にした超硬合金ビットの寿命試験(実験1)と,予め刃先の摩耗程度を4段階に変化させた超硬合金ビットによるMDF,ヒノキ等6種類の被削材の穴あけ加工試験(実験2)を実施した。穴あけ加工中の切削騒音は,精密騒音計からデータレコーダに録音して,のちにFFTアナライザーを用いて周波数分析を行った。そして,得られたパワースペクトルから暗騒音のそれを減じて,これを切削音パワースペクトルとした。 切削音によってビットの刃先摩耗状態をモニタリングしようとすると,ビット摩耗量と音圧レベルの関係図において,回帰直線の相関係数の絶対値と傾きの大きいことが望まれる。実験結果では,両実験共に,切削音の音圧レベルのOver all値はビット摩耗量とは無関係に一定値を示した。そこで,切削音パワースペクトルを20Hz〜20KHzの間で2KHzの幅で区切って各周波数域での音圧レベルを調べると,被削材によって多少異なるが,概ね10KHz〜12KHz或は10KHz〜20KHzの帯域で,刃先摩耗の大きいビット程音圧レベルの顕著な減少が認められ,ビット摩耗量と音圧レベルの回帰直線の相関係数の絶対値と傾きが大きくなった。 以上の実験結果から,特定の周波数域での音圧レベルを測定することによって,ビットの刃先摩耗状態をインプロセスで監視できる可能性のあることが示された。
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