研究概要 |
この研究は今後その需要が急速に伸びることが考えられ,多種多様な切削加工の施されることが多いMDFの被削性を切削抵抗,加工面の粗さ,端縁の仕上がり度(バリ),切屑形状,加工面の性状(繊維の切れ方・けば立ち)などの面から究明したものである。また,MDFの被削性は木質材料の中で切削工学的にも興味深い。得られた新知見は以下の通りである。 1.切削抵抗:(1)切削角の増大にともない主分力,背分力ともに直線的に増加し,木材より均質な材料の傾向に近い。(2)主分力,背分力ともににげ角によってほとんど変化しない。(3)切込み量の増大と共に主分力は上に凸な曲線で漸増するが,切込み量が0.2mm以下程度の小さい場合の増加は木材の場合ほど急激ではない。また,背分力は木材の場合と同様,一般に切込み量の増加と共に減少し,次第に負(下向き)となってゆく。比切削抵抗は切込み量の減少とともに直線的に増加するが,木材の場合にような0.2mm以下での急激な増加はみられない。 2.加工面粗さ:(1)切削角および切込み量が増大すると加工面粗さも大きくなる。これは木材のうち軟材の傾向に似る。(2)にげ角の変化に対しては変動が少なかった。 3.バリ:切削角および切込み量が増大するとバリの量も多くなる。 4.切屑のカール半径:(1)端面切削の場合,切込み量が小さいときに切屑が粉状あるいは非連続状態となることがあったが,これらの場合を除き,切屑はカールする。(2)端面切削の場合,カール半径はにげ角の増加とともに減少し,切込み量の増大と共に増加した。切込み量の影響は木材の横切削の場合に似る。また,切削角との間には一定の傾向が認められなかった。(3)板面平行切削の場合には,カール半径は切削角の増加とともに減少し,切込み量の増加とともに増大した。また,切屑型は切込み量の増大にともなって流れ型から折れ型に移行する。 5.加工面の性状:(1)切削角が大きくなるにつれ繊維が切断されにくくなる。(2)切込み量が増大すると繊維のけば立ちが目立つようになる。 6.一般に,板面平行切削の場合の方が端面切削の場合よりも被削性諸因子の数値は低くなる。
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