研究概要 |
1970年以来,東大海洋研究所研究船,白鳳丸・淡青丸を用いて東京湾,相模湾,駿河湾,大槌湾,三陸沖,日本海およびベ-リング海で採集された毛顎類3種(Sagitta elegans,S.crassa,S.nagae)の消化管内容物を光学顕微鏡および走査電顕を用いて調べた。毛顎類3種の主要餌生物はカイアシ類で時には全消化管内容物の80%以上を占めることがあった。次いでオキアミ類,端脚類,枝角類,介形類,毛顎類,クラゲ類などが検出された。稚仔魚はほとんど検出されず三陸沖,ベ-リング海,日本海から採集された個体に見られるが出現率は全消化管内容物の1%にも満たなかった。S.nagae,S.elegansを用いた摂餌実験ではカイアシ類など他の餌生物と一緒にされる稚仔魚はほとんど捕獲されず,稚仔魚のみにして高密度条件の時に捕食が認められた。カイアシ類,枝角類などの甲殻類は形状も丸みをもち毛顎類に顎毛で捕獲された後,短時間に口の中に呑み込まれるが,細長い形状を有する稚仔魚は捕獲から呑み込まれるまで時間がかかり,また呑み込まれない個体もかなり多い。顎毛で傷つけられた稚仔魚は捕食されなくても,その後充分な遊泳ができないためやがて死に致ると推定される。野外調査では三陸沖暖水塊のフロント域には多くの稚仔魚が出現したが,その海域から採集された毛顎類の消化管内からは前述のごとくほとんど稚魚が見られないという現象が認められた。この事は顎毛で傷つけられる稚仔魚の多さを示唆するものである。東京湾から採集されたミズクラゲの消化管の中からも若干の稚魚や魚卵が検出された。大槌湾に生息する端脚類Themisto japonicaは春季にはイカナゴの稚仔魚を捕食し,摂餌は餌の密度が高くなるのに伴なって活発になる傾向が認められた。
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