研究概要 |
1.本研究は,マアジ筋肉水抽出エキスが,既往の分析値に基づく合成エキス(アミノ酸,ヌクレオチド,クレアチン等の有機塩基,および乳酸を含む)よりブリに対して強い摂餌刺激効果を示すことから,エキス中の未知の有効成分の検索及び有効成分による摂餌刺激と化学感覚との関連を明らかにするために計画された。 2.平成3年度は有効成分の分子量についての検討をゲル濾過法で行った。マアジ筋肉水抽出エキスを限外濾過(分画分子量10,000)して得られた濾液をSephadex G-15でゲル濾過に付し,得られた分画液をグループ分けして各グループ内の分画液を合一したものについてブリ若魚(平均体重,14,4g,25.9g)に対する摂餌刺激効果を調べた。あわせて各画分についてニンヒドリン反応,紫外部吸吸光度等の測定を行った結果,おもな摂餌刺激成分は分子量約600以下の画分に集中して含まれることがわかった。各画分に対するブリ(体重420-524g)味覚神経応答を調べた結果,摂餌刺激効果をもつ画分に強い味覚器刺激効果が認められた。 3.平成4年度はイオン交換法によって荷電性の面から検討した。マアジ筋肉エキスの限外濾過(分画分子量10,000)液を,DEAE-SephadexA25陰イオン交換体およびCM-Sephadex C-25陽イオン交換体を用いバッチ法によりイオン交換処理を行った後ブリ若魚(平均体重31.1g)に投与して摂餌刺激効果を調べた結果,DEAE-Sephadex処理により摂餌刺激効果は減少し,一方,CM-Sephadex処理では殆ど影響はみられなかったが,DEAE-Sephadex処理後にCM-Sephadex処理を施すとさらに効果が減少した。これらの結果から,有効成分の一部がDEAE-Sephadexに吸着されることおよびCM-Sephadexによって除去される成分にも他の成分との間に協同的な作用があることが示唆された。有効成分が荷電成分として分離できれば,今後さらに荷電性を利用した細分離が可能となる。
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