研究概要 |
プロトプラストの融合試験では,紅藻アマノリ属のスサビノリ(養殖種)とウップルイノリ(野生種),緑藻アナアオサとスジアオノリを主な研究対象とした。アマノリ類ではノリ病原細菌の培養ろ液から調製した粗酵素を,またアオサ,アオノリでは市販セルラ-ゼとアワビ,サザエ消化酵素を用いて,それぞれの葉体からプロトプラストを分離した。プロトプラスト融合には,ポリエチレングリコ-ル法の適用が可能であったが,電気融合法による場合が融合率が高く,融合細胞の生残率も高かった。電気融合法では,スサビノリ(YE)とウップルイノリ(PS)の場合,高周波30ー40V,15ー20S,直流パルス250ー300V,30ー40μS,アナアオサ(UP)とスジアオノリ(EP)の場合,高周波20V,10ー15S,直流パルス250V,25μSの印加条件がそれぞれの融合に適した。また,電気融合用の緩衝液に1〜5mMのCa^<++>とMg^<++>を添加すると,融合及び融合細胞の球状化が促進された。プロトプラストから再生体を得るための培養条件(光,温度,培養液など)を検討した結果,YE×PS,UP×EP間での融合細胞からいくつかの再生体を得ることができた。これらの再生体については,形態,稔性,染色体数,成長などの性状と共に,光合成色素,脂質,脂肪酸組成および酵素活性などが調べられた。その結果,YE×PSの再生体には,フィコビリン色素含有量において,また,UP×EPの再生体には,形態,成長及び8,11ーヘプタデカジエナ-ル(海藻香気成分の一つ)の生成活性において,それぞれの両親株と異なる株が存在した。これらの株は,染色体数が両親のいずれかと同数であることから,いずれも細胞質雑種であると判断された。これらの結果は細胞融合法による有用海藻の育種が可能であることを示しているが,細胞質のみならず核の融合を共う細胞融合法の確立をめざして研究を継続実施している。
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