前年度に引き続き鹿児島県上甑島浦内湾および佐多町外之浦の2箇所においてコレクターによるイセエビのプエルルス幼生および稚エビとその他の生物蝟集効果を調査し、コレクターの材質を比較検討した。 1.鹿児島県上甑島浦内湾における調査結果 養殖筏に懸垂設置した5種類30基のコレクター材質(杉葉枝、キンラン、塩化ビニール板、古網、人工海藻)を用い、5月〜12月の間、毎月1回コレクターを引き上げて蝟集生物の調査を実施した。コレクターの生物群は83種確認され、9月が種類、付着量ともに最も多い。多い順にあげるとフジツボ類、二枚貝、コケムシ類、ホヤ類であり、自由生活者ではコシオリエビ、モエビ、コツブムシ、幼ガニ類等でほぼ昨年と同様の結果であった。生物蝟集効果は杉板・キンランがもっとも良く古網・木棚は不良であった。また懸垂期間が長いものほど効果は良好となった。プエルルス幼生と稚エビはけい20個体採集され8月が最多であった。 2.鹿児島県佐多町外之浦における調査結果 上記の上甑島におけると同様の方法で採集調査を実施した。5〜7月の間ではコレクターに付着する生物は移動性のモエビ類、カニ幼生(特にベニツケガニ、アサヒガニ)、多毛類が多かった。イセエビ幼生は7月までに9個体が採集されたが、8月には2度にわたる台風のためコレクターが流出し調査の続行が不能となり、上記の浦内湾に集中して行った。プエルルス幼生はキンランのような植毛体(人工海藻)によく付着し、水温は26〜28度で最も付着が良好で、移動性動物(コツブムシ、モエビ、サラサエビ等)との生活を嫌う傾向が見られた。
|