1.タテジマフジツボ再生産条件 検定生物としてタテジマフジツボを用いることにより、以下の飼育条件下で孵化幼生を毎日入手することが可能となった。塩分濃度約27、水温21〜25℃、自然光条件下で飼育するが、毎日数時間は干出させる。飼育海水は少なくとも一週間毎に全換水を行う。餌はアルテミア孵化幼生を用い、フジツボ1個体当たり一日約800個体以上を投与する。 2.タテジマフジツボのキプリス幼生を用いた付着試験方法 孵化幼生は、珪藻Chaetoceros calcitransを餌料として22〜25℃の室温で飼育することによりキプリス幼生へと変態させることができる。このキプリス幼生は変態後5℃の冷蔵庫に2〜10日間収容したものを試験に使用可能である。試験容器には10ml容ポリスチレン製組織培養用シャーレまたはガラスシャーレを用い、容器に試験試料を塗布し、乾燥させる。容器にキプリス幼生20個体と濾過滅菌海水5mlを入れ、3〜4日以内に付着数を計数する。試験条件としては、暗条件、塩分濃度20以上、水温25℃が望ましいと考えられた。 3.付着防除方法の探索 (1)付着阻害物質の基質への塗布による付着防除:豚肝臓遊離脂肪酸(FAPL)およびアルギン酸カルシウムの2つの物質で付着忌避活性が認められた。後者は室内試験で80%以上の強い付着阻害活性が認められ、青森県陸奥湾において天然での付着阻害活性を現在試験中である。 (2)海水への物質注入による付着防除:発電所の取水路、復水器管への付着生物の付着防止に用いられていた塩素に代わる薬剤として、無害な炭酸ガスを注入することによる付着防除法について検討した。炭酸ガス通気により試験期間中のpHは6.6以下に低下し、付着率は96時間後においても0%(対照区は95%)で、強い付着阻害効果が認められた。
|