研究概要 |
1.オゴノリ寒天中の低分子量の生長促進物質の検索を試みた。逆相(Shim-pack CLC-ODS,)及び順相(TSKgelAmido-80)シリカゲルHPLCにより,糖,有機酸,アミノ酸,核酸関連化合物等を,また,蛍光X線分析と原子吸光分析により各種無機元素の含量を調べた。その結果,これらの成分はマクサ寒天と比較して,有機酸のビルビン酸が検出されず,酒石酸,マロン酸,クエン酸が検出される点で極めて特徴的であった。クエン酸,酒石酸,マロン酸をそれぞれ40mg/ml,10mg/ml,10mg/ml混合添加した時,生長率が対照に対して149%増加した。徒って生長促進物質はこれら3種に有機酸である可能性が強く示唆された。 2.次に組織培養用寒天として要求される物理化学的性質について検討した。最も生長のよい0.7%濃度の時オゴノリ寒天のゲル強度は24,pHは6.6,粘度は7.9cp,SO_4は0.79%,離奬水量は200時間後に2gであり,生長のよい寒天は,ゲル強度が中程度で,かつ離奬水量が少ないことが大切であると判明した。 3.海藻の無菌組織培養により抗腫瘍活性物質を生産することを試み,マツモ,コブシミル,ミルの計3種の生長点を組織培養した。培養条件はPESI培地中14:10の長日で1200ルクス,15℃とした。これら海藻から糖タンパク質を抽出したところ,収率はマツモ4.7%,コブシミル2.1%,ミル2.2%であった。その抗腫瘍活性を,WI-38VA-13の増殖抑制効果を指標とした測定した。IC_<50>値はマツモが最も小さく9.1,コブシミルは300.8,ミルは274.9であった。無菌組織培養をすると抗腫瘍性糖タンパク質は収率と活性が天然海藻と比較したわずかに低下するものの,安定的に生産されることが確かめられた。
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