研究概要 |
1.ウナギ培養肝細胞は一種類のlipoprotein、すなわち超低密度lipoprotein(VLDL)様lipoproteinだけを合成・分泌した。しかし、ウナギ血清中には二種類の主要なlipoprotein,VLDLと高密度lipoprotein(HDL)が存在したが、肝細胞はHDLを合成・分泌しなかった。2.ウナギ肝細胞が分泌するVLDLの特徴。(1)VLDLの化学組成。protein、triacylglycerol、free cholesterol、cholesterolester及びphospholipidの含量はそれぞれ12,69,3.6,0.4%であった。(2)VLDLのapoproteins。VLDLの主apoproteinsはapo Aとapo Bであった。哺乳動物と大きく異なる点は哺乳動物の培養肝細胞あるいは還流肝により分泌されたVLDLはどれも主要なapoproteinとしてapo Aを含んではいないという点である。(3)VLDLの分泌速度。ウナギの肝細胞はVLDLを3.79±1.51μg VLDL/mg cell protein/h(n=6)の速度で分泌した。この値はヒトの肝細胞がVLDLを分泌する速度に較べ10倍高かった。3.VLDL合成・分泌に及ぼすinsulinや血清lipoproteinsの影響。(1)insulinはVLDLの分泌を抑制し、VLDLへの ^<14>C-ロイシン及び ^<14>C-酢酸の取り込みを抑制した。(2)血清VLDLの影響。培養肝細胞に血清VLDLを添加すると、肝細胞はVLDLの分泌を促進した。また、VLDLのapoproteinsの合成、特にapo Bの合成が促進された。4.分泌されたVLDLはリポソームやlipoproteinとインキュベートするとHDL様粒子に変換された。5.ウナギ筋細胞内に脂質が多量に含まれていることを組織化学的に確認した。 ^<14>C-VLDLをウナギの肝門脈に注射し10分後に筋肉、肝臓、心臓、腎臓へのVLDLの取り込みを調べたところ、筋肉への取り込みが最も多かった。また、筋細胞膜上にはVLDLと特異的に結合するタンパク質が存在し、その分子量は77,000であることが分かった。
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