研究概要 |
人工降雨および越流表面水を用いたマサ土斜面の侵食実験を行い,時間経過に伴うリルの形態と侵食量を調べ両者の関係について検討した. リルの周長,面積,下流端からの長さの時間変化は,流出水量や流出土砂量の時間変化と同様な傾向を示し,リル侵食ははじめは深さ方向に進行するが,ある河床勾配に達すると横方向に進行し,ある周長になるまで発達すると面積のみ増加する. 粗視化の度合を変える方法でリルの平面形態のフラクタル次元を求め,リルの形態の数量化を試みた.降雨の初期には,次元は一時的に大きくなったり減ったりしながら次第に減少する.これはリルの形態が単純になることを示している.さらに,波形解析の手法を用いリル平面形態の数量化した.まず,リルの外周を一つの空間波形とみなして解析を行い,P表現表示という波形に変換して自己相関関数およびパワースペクトル関数を計算した.平面形態は波形解析を用いて,形態を数値的に評価することができるが,一本一本のリルでしか評価できないのが決点である. 次にDLAモデルを用いてリル形態の時間変化のシミュレーションを行い,実験リル網とシミュレーションで得られたリル網のフラクタル次元および面積の経時変化について比較を行った.その結果,今回使用したリル網発達モデルは,平面形態の変化の様子をかなりよく表現しているといえる.今後,シミュレーションで使用したパラメータの物理的意味や,またそれが侵食に関する諸要因とどのように関わっているか実験や現場観測を中心に考察を進めていくことが課題である. さらにリル網を生物の成長過程とみなしたシミュレーションを行った.リルの発達は,形態分化(リル平面形態),消耗物質(リル侵食深さ),活性化物質(ヘッドダウン現象,掃流力など),抑制物質(土砂の堆積など)の4つの相互作用により発達して行くと考えたものである.
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