研究概要 |
ウズラのDNA多型を遺伝子マッピングに利用するために,以前に作成したランダムプローブの遺伝的調査を行った。羽色,卵穀色,タンパク質・酵素の遺伝標識に関するデータが得られたものの中より,子孫の多かった6家系を選び,それらから,DNA研究の予備調査で最適な臓器と判断された肺を採取した。6家系の両親12個体のDNA試料を,順次,6塩基認識制限酵素で切断し,作成したプローブでハイブリダイゼーションした結果,プローブNo.1はPstIで,また,プローブNo.3はEcoR1で,それぞれ個体変異が観察された。変異の観察された家系の親子について,その遺伝様式を調査した結果,いずれのプローブも,鳥類では,まだ報告のない伴性のZ染色体性のものであることが判明した。これらのプローブは,ウズラのZ染色体の遺伝子連鎖地図の充実に有用であるばかりでなく,今後,同じキジ料に属するニワトリのZ染色体との相同部分を明らかにし,鳥類,特にキジ料の進化の過程を研究する上で,貴重な材料であると言える。本研究の主眼であった常染色体の遺伝子連鎖地図を充実するための上記以外のプローブに関しては,多くの制限酵素で調査したにもかかわらず,上記の6家系では,個体変異が検出できず,性染色体性のものか,あるいは,常染色体性のものか,明らかに出来なかった。今後の調査で,さらに家系を増やし,明らかにしたい。次に,13の遺伝標識を用い,調査例数30以上の27組の組合せで連鎖実験のデータを集計したが,GPIとPGDの座位間で,ゆるい連鎖の可能性が示唆されたが,例数不足のため,存在を明確にするまでに至らなかった。最後に,常染色体の遺伝子連鎖地図を充実するための遺伝標識として,新たに卵穀色(ce)および羽色(L)それぞれの座位の遺伝子分析を行い,それらの遺伝様式と形質の特徴をまとめ,公表した(印刷中)。
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