研究概要 |
鳥類の概日リズムは,松果体・網膜・視床下部に存在するオシレーターが機能的に結びついた概日機構により制御されている。本研究は,これらのオシレーターがどのような仕組みで内的同調を保ち,個体レベルの概日リズムを制御しているかを明らかにしようとするものである。まず,ハト,ウズラ,ニワトリについてマイクロダイアリシス法により松果体メラトニンリズムを測定し,一個体の松果体リズムを長期間連続的に記緑する方法を確立した。次に,網膜と松果体との機能的結合を知るために,網膜に局所的に光照射をし,松果体メラトニン合成が抑制するか否かを調べた。その結果,網膜で受容した光は松果体メラトニン抑制にほとんど寄与していないことがわかった。網膜からの光入力を遮って光照射した場合にはメラトニン抑制が生じることから,メラトニンの光抑制は網膜外光受容器により行われていることが示された。また,松果体メラトニンリズムの光による位相変位を調べるために,全身に光照射を行ったところ,光照射を行わなかった群に比べ,リズムの位相が大きく変位していることがわかった。さらに,行動リズムを指標として,網膜に局所的に光照射を行うと,リズムの位相が全身照射と同じように変位することを見いだした。これらの結果から,ハトでは,松果体メラトニンの光抑制とリズムの位相調節は異なった経路で調節されている可能性が示された。
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