研究概要 |
屠畜血液のうち赤血球画分は、特に利用性が乏しく、その食材としての活用に関する研究が強く望まれている。屠畜血液ヘモグロビン(Hb)について従来行われてきた天然着色料としての食肉製品への利用は、いずれもその調製に複雑な処理を必要とするものである。一方,食肉製品の発色は、肉の塩漬工程において添加する発色剤、特に亜硝酸塩の作用効果に基づくものであるが、製品中における発癌性物質ニトロソアミン生成の可能性が指摘され、食肉加工業における亜硝酸塩使用量は低減化の傾向にある。これらの観点から、食肉に含まれるヘム色素の一つであり食肉製品の発色にミオグロビンと共に直接関与するHbを牛血液に求め、本色素を食肉製品に対し塩漬肉色増強の面から活用しうる可能性を検討した。まず牛血液Hb粉末標品を用いて検討し、HbからニトロソAb(NOHb)を未加熱状態で容易に生成しうる至適反応条件〔NaNO_2-アスコルビン酸ナトリウム(NaAsA)濃度,pH,時間および温度等〕を把握した。調製したHb反応液(NaNo_2およびNaAsAは各25mM,pH4.5)でHbのニトロソ化は、2つの設定温度(2℃と20℃)で速やかに進行し、高くて安定した発色率を得た。また貯蔵中のHb反応液中に残存NaNO_2は検出されなかった。この条件で調製したHb反応液を添加したソーセージの発色状態を調べた結果、Hb反応液の添加によって発色は増強され、定量したニトロソヘム色素の増加割合から、添加したHb反応液中のNOHbは、ほぼ定量的に製品の発色に寄与していることが確認された。続いて実際に牛血液から高純度のHbを調製し、Hbのニトロソ化至適条件を求めた結果、上記反応条件で速やかに全Hbの80%以上がニトロソ化された。この反応液に40%グルコースを加えることにより、NOHbは安定に保たれ、残存亜硝酸塩や一般細菌はほとんど検出されなかった。Hb反応液添加ソーセージで発色は定量的に増強され、貯蔵および光による退色試験でも良好な結果を得た。
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