研究概要 |
本研究課題では,モルモットおよびラットを実験材料にして,それぞれの動物の鼻粘膜および喉頭粘膜に対する機械的刺激および化学的刺激によって誘発される呼吸反射の様式と,末梢求心性経路における感覚受容機構を明らかにした。結果は以下の通り要約される。 (1)モルモットおよびラットの鼻粘膜,とくに鼻前庭を含む鼻腔前方域に機械的触刺激と圧刺激を加えると,いずれの動物からもくしゃみ反射が誘発された.1回の刺激で2〜3回連続する反射が現れることが多かった。三叉神経篩骨神経中にこれらの刺激に対して応答する受容器が見い出され,それらの応答様式を明らかにした。(2)モルモットの喉頭部に機械的触刺激を与えると明瞭な咳反射が誘発された。上喉頭神経中に存在するirritant受容器がこの刺激に対して鋭敏に応答した。さらに反回喉頭神経の中にも咳反射に関与する受容器の存在が確認された。カプサイシン溶液を用いて喉頭粘膜のCーfiberを選択的に刺激したところ,咳反射は現れず,無呼吸反射のみが強く出現した。このことから咳反射にはCーfiberよりもirritant受容器が関与することがわかった。(3)ラットの喉頭部に機械的刺激を与えると燕下反射が常に出現した。同様の結果は上喉頭神経の電気的刺激でも得られた.ラットの上喉頭神経求心性活動を記録したところ,呼吸性活動を示すdrive受容器(58%)や喉頭内の圧変動に応じるpressure受容器(28%)は数多く見い出されたが,irritant受容器(11%)は少なかった. これらの成績から,鼻粘膜刺激によるくしゃみ反射に関しては,両動物とも類似した発生機構を有すると考えられるが,喉頭粘膜からの咳反射に関しては,感受性の差,受容器構成の差,さらには中枢におけるパタ-ンジェネレ-ションに関して明瞭な動物種差が存在するものと考えられた.
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