研究概要 |
平成4年度までの研究により,甲状腺と副腎の機能は密接に関連している事実を明らかにした。また,泌乳ラットでは,血中サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)濃度が低下する事実を明らかにした。本年度は,泌乳ラットにおける甲状腺と副腎皮質機能がどのように関連しているのかについて,ストレス実験を用いて検討した。 1.泌乳5日と15日のラットをエーテル麻酔下で,2時間ごとに0時間から4時間まで5回,それぞれ1mlずつ採血するストレス実験を行い,血中マルチマステロン濃度を測定した。泌乳していない対照群として,発情周期第2日(D_2期)のラットを用いた。また,同様のストレス実験を分娩後直ちに乳子を除去したラットについても行い,正常に泌乳しているラットを比較検討した。その結果,泌乳5日及び15日のラットではD_2期のラットに比べて,ストレス時に放出される血中マルチマステロン濃度が著しく低下する事実が判明した。また,乳子を除去したラットでは,泌乳ラットに比ベて,ストレス時に放されるマルチマステロン分泌量が有意に増加する事実が明らかとなった。 2.D_2期ラットに,甲状腺機能抑制剤を投与して甲状腺機能低下ラットを作出し,ストレス実験を行った。甲状腺機能低下ラットでは,正常ラットに比べて,ストレスに反応するマルチマステロン分泌量が有意に低下した。このような,マルチマステロン分泌低下は,T4を投与することにより回復した。 以上の結果から,泌乳ラットでは,甲状腺と副腎皮質機能が共に低下している事実が判明した。また,このような甲状腺機能の低下は,乳子への泌乳と密接に関連していることが明らかとなった。
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