研究概要 |
草食性の小型齧歯類であるハタネズミが反芻動物の病態モデルとなり得るかという点に着目し、まず、その生理的学特性デ-タを整備した。これまでに得た成績の概要は以下のとおりである。 1)現有するクロ-ズドコロニ-のハンガリア産ハタネズミの成長に伴う心電図変化を他の小型齧歯類と比較検討した結果、その変化の様態はラットに類似しており、心電図に関する多くのパラロメ-タが離乳期(約14日齢)前後を境に変化の様式が異なる特徴を有することがわかった。2)2成熟ハタネズミを対象に無麻酔、無拘束下における心電図と活動の長時間同時記録を行い、心拍動および活動量のリズム性,それらの相関性を調べた結果、ハタネズミの24時間平均心拍数はマウスに比べて有意に少なく,心拍数と活動量の変動には1.5〜4時間周期のウルトラディアンリズムが明瞭に認められた。また両者のスペクトル解析によりハタネズミはマウスとは異なる体内リズムを有し、それが心拍変動に影響していると考えられた。3)新規購入のドライケム方式電解質アナライザを用いて血漿中のNa^+,K^+,Cl^-濃度を測定した結果、いずれもマウスより低値を示す傾向にあった。また、これらの測定値は従来の炎光分析法によるものと極めて高い相関があったことから以後の病態モデルでの検討にあたって本装置が有用なことが確められた。4)現在、心、腎、脾などの臓器を中心に免疫組織化学的,電顕的検索を続行中であり、これらの正常像を確認した上で,病態モデルを作出し、機能異常と形態異常の関係を明らかにしていく予定である。 以上のことから,現時点ではまだ、反芻動物の病態モデルとしての価値を明言することはできないが、ハタネズミは他の小型齧歯類とは異なる生理学的特性を有することは間違いなく、今後とも大いに注目すべき実験動物といえる。
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