研究概要 |
血管内皮細胞は驚くべき多機能細胞であり,細胞質に含まれる内皮特殊顆粒(Weibel-Palade顆粒,以下WP)はvon Willebrand factor(vWf)やGMP140などのプペチドのほか,種々の生理性ペプチッドに加えてヒスタミンなどのモノアミンを含有することは我々の従来の二次元電気泳動と高速液体クロマトグラフィによる解析と免疫細胞化学からも明らかである。例えば平成3年度に行ったヒト満期産臍帯静脈から得られた内皮細胞を培養し,^<35>S-メチオニン標識蛋白を二次元電気泳動とオートラジオグラムで解析する上で,培地にWP脱顆粒剤であるcompound48/80を添加すると,20Kと30Kのペプチドが特徴的に得られ,これらのWP由来ペプチドの機能について目下解析を行っている。また,我々はこれに関連してcompound48/80以外の脱顆粒剤であるPMAやA23187も使用し,放出蛋白の解析も行っている。 さらに,WPはヒスタミンのreservoir siteであり,WPからのヒスタミンの放出とペプチドの放出との間にいかなる因果関係があるかを検討した。この研究にあたってまず予備実験としてヒト臍帯静脈内皮のvWfとヒスタミンの局在を二重標識免疫細胞化学で検索した結果,WPの一部にヒスタミンの局在が確認され,我々が従来から行ってきた高速液体クロマトグラフィによるデータが再確認された。compound48/80はヒスタミン遊離剤であることから,同薬剤投与による脱顆粒はヒスタミン依存であるとの証明となった。この詳細はAnat.Rec.232巻(1992年2月)に掲載している。 近年強力な血管作動性ペプチドであるエンドセリンファミリー(以下ET)の血管生理に果たす役割が注目されている。そこで計画に沿った最終年度の研究遂行としてエンドセリンとその類縁ペプチドであるサラホトキシン(以下STX-S6b)によって誘発されるWPの脱顆粒がin-vitro血管収縮機序に如何なる因果があるかを解析したが,この詳細は様式8に記載する。
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