研究概要 |
本研究の目的は,内臓痛の中枢内伝導路を解明することである.現在,内臓痛に固有の伝導路は解明されていない.したがって,その解明のため,内臓痛を伝える可能性のあるすべての神経路をまず形態的に見つけ出す必要がある.これまで,脊髄から上行する線維およびその起始細胞を広く検索する過程で,脊髄結合腕傍核線維の走行,終末および起始細胞について新たな所見を得ることができ,それらをさらに詳細に検討を加えている.結合腕傍核は,脊髄からの情報を広く受け,脳幹の種々の領域に情報を与える結合腕傍核はいくつかの亜核に区分されるが,その一つに,大型の細胞が球状に集まっている領域(RA)がある. RAからの出力のほとんどが視床髄板内核群に至り,RAは小脳前葉へ至る線維の側副枝を受ける唯一の領域である事を明らかにした.そこで,本研究費の援助を受けて,脊髄結合腕傍核線維の起始細胞,経路および終止を詳細に検討した.その結果,起始細胞は従来第I層だけに存在することになっていたが,第V,VII,VIII,X層および側索背側部にも多数存在することが明らかになった.これらの細胞のうち比較的多くの細胞が,両側性に線維を送っていることも明らかになった.また,第V層および側索背側部からの結合腕傍核線維は両側性に脳幹網様体腹外側部を上行して,結合腕傍核の尾方腹側と前方背側から侵入して当核に終止することがわかった.なお,脊髄で交叉する線維は中心管の背側を通っていた.シナプスの様式には終末ボタン状のものと軸索瘤状のものがあり,後者が多かった.シナプスは細胞体上には極わずかであった.したがって,シナプスは樹状突起のどこにあるのか,また軸索ー軸索型のシナプスがあるかどうかが大きな課題になってくる.今後,この課題に取組みたい.
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