1.神経親和性ウイルス(単純ヘルプスおよび日本脳炎ウイルス)をラット線条体に注入し、前頭皮質に逆行性に標識されるニュ-ロンを免疫組織化学(ABC)法を用いて検出した。前頭皮質内のIIーVI層に分布する多数の中型ないし小型錐体細胞がそれぞれのウイルス免疫活性を呈した。ウイルス免疫活性は細胞体・核のほか、樹状突起や軸索にも濃密に出現し、そのため樹状突起の末端や棘装置も明瞭にGolgi様に標識された。日本脳炎ウイルスによって標識された軸索は免疫陽性産物が分節状に配列し、数珠状線維様の外観を呈した。少数のウイルス陽性錐体細胞に隣接して小型ニュ-ロンが少数標識された。これらの小型ニュ-ロンは形態的特徴から非錐体細胞と考えられた。同時にこの所見は各ウイルスのシナプス越え逆行性標識を示すものと思われた。 2.ラット坐骨神経に上記ウイルスを注入した結果、脊髄レベルで坐骨神経運動ニュ-ロンが多数Golgi様に標識された。脳幹においては青斑核・脚傍核・縫線核など数か所のニュ-ロンが逆行性に標識された。これらの脳幹の核群は、直接坐骨神経に神経線維を送らないため、この標識は運動ニュ-ロン支配ニュ-ロン群のシナプス越え逆行性標識と考えられた。 3.ラットの片眼硝子体に上記ウイルスを注入した結果、ウイルス免疫標識は視交叉上核、上丘、後頭皮質のほか、反対側網膜の神経節細胞にもみとめられた。 4.以上より、ウイルス標識法が(1)Golgi様標識とシナプス越え標識を示すこと、(2)運動前ニュ-ロンの選択的標識に有用な検出法であること、が明らかになった。
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