研究概要 |
ギャップ結合を介する細胞間連絡は低分子の物質を交換することで細胞増殖分化を制御するが,その実体を解明するために,増殖分化が容易に制御できる培養細胞を使用して,細胞間連絡の情報交換と細胞増殖分化との関連について研究を進めた。 1.細胞間連絡による細胞増殖の変化について3T3-L1細胞を用いて調べた。増殖停止状態の細胞を血清処理すると13時時間後にDNA合成を開始する細胞は,刺激直後にフィブロネクチン被覆ビーズが付着し,その後細胞間連絡は一時低下した。増殖刺激に先立ち,細胞間連絡を発癌プロモーターTPAで前処理し低下させておくと,増殖刺激によるDNA合成は著名に増加した。逆に細胞間連絡をdibutyryl cyclic AMP前処理で増加させておくと,増殖刺激によるDNA合成は抑制された。 2.3T3-L1細胞から分化した脂肪細胞は,フィブロネクチン被覆ビーズが付着し,かつ細胞間連絡は抑制されていた。脂肪細胞分化誘導時にTPAを加えると脂肪細胞分化は抑制され,逆にdbcAMP処理では脂肪細胞分化は増強された。 3.細胞増殖刺激直後と脂肪細胞分化直後の細胞ホモジネートを作成し,その特異的物質を検索している。細胞間連絡を介して移動し且つ増殖分化に影響する物質としてカルシウムイオンについて調べた。増殖刺激により細胞内カルシウムイオンの増加した細胞の出現頻度は増え,TPA前処理は更に増加させ,dbcAMP処理は抑制した。増殖刺激直後のフィブロネクチン被覆ビーズ付着細胞の多くでは,細胞間連絡低下と細胞内カルシウムイオンが増加し,その後DNA合成が進んだ。細胞増殖と合化に及ぼす細胞間連絡の影響について調べ,3T3-L1細胞では細胞間連絡の関与と情報交換物質の候補としてカルシウムイオンを明らかにした。
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