研究概要 |
脱水などの抗利尿時、腎乳頭部には細胞外の高浸透圧に適応するため、電解質(Na・K)ではなくsorbitol,myoinositol,betaine,glycerophosphorlcholine(以下GPCと略す)などの有機浸透圧物質が蓄積されている。今年度の検討では、in vivoにおけるそれらの蓄積及びそのメカニズムを検討した。1.アミノ酸も腎髄質有機浸透圧物質として機能していることを、従来の有機浸透圧物質測定用HPLC法に加えてアミノ酸分析計を併用し、Wistar系ratにおいて高張Na投与と低張溶液投与群の比較、およびcontrol(水分自由摂取)と脱水状態(水分制限)の比較により腎髄質の高浸透圧状態においてtaurineの蓄積も増加することを明らかにした。2.腎乳頭部における細胞外液溶質(Na,urea)と細胞内有機浸透圧物質の関係を明らかにする上で、水分制限ratの検討では、髄質部のNaのみならずureaも高濃度となりそれぞれの効果を区別することは不可能であった。そこで、高張Na溶液、高張urea溶液を経静脈的に投与することにより、それぞれの溶質による腎髄質高浸透圧状態におけるin vivoでの有機浸透圧物質蓄積を検討した。高張Na投与条件では全ての腎髄質有機浸透圧物質の増加が見られるに対し、高張urea投与条件ではGPCのみの増加が見られた。3.カリウム欠乏状態における尿濃縮障害と腎髄質有機浸透圧物質蓄積の関係を明らかにするため、2週間低カリウム食を投与したrat(LOWK)、およびさらに3日間の水分制限を加えた条件(LOWK+DEHY)で以下の検討を行なった。腎髄質有機浸透圧物質の中でその蓄積メカニズムが分子生物学的に明らかになっているsorbitol及び、その合成に関与するaldose reductaseの活性とmRNA量を検討した。LOWK条件ではsorbitol含量、活性、mRNA量の有意の低下が見られた。LOWK+DEHY条件ではいずれも正常ratのcontrol levelまでしか回復せず、通常の脱水条件よりは有意に低値であった。
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