研究概要 |
本年度は2つの実験を行った。1つは、NaーCa交換に対するカルモジュリン抑制薬の効果について、もう1つは、NaーCa交換電流の温度感受性を冬眠する動物としない動物の心筋細胞で調べることである。まず前者について、最近、カリフォルニア大学のPhilipson等はNaーCa交換担体蛋白の一次構造を明らかにし、その一部がカルモジュリン結合部位に相当すると報告した。そこでカルモジュリン心筋のNaーCa交換に関与しているかどうかを、カルモジュリン抑制薬を用いて調べた。抑制薬として知られるWー7とTrifluoperazineは濃度依存性に交換電流を抑制し,1/2最大抑制値はそれぞれ、13μM,7μMであった。しかし、より特異性の高いcalmidazoliumと、CGS9343Bを細胞外から与えると、どちらもNa電流を減少させたがNaーCa交換電流には変化を与えなかった。電極から細胞内に与えても20分間で電流は変化しなかった。カルモジュリン結合ペプチドのマストパラン13.5μMを電極内に入れ、細胞内潅流すると、8分目で電流は、77%に減少したが、その後17分、28分目で測定した電流は更に減少しなかった。これらの結果は、カルモジュリンはNaーCa交換に直接関与していない事を示唆する。Wー7とTrifluoperazineの抑制効果は、非特異的なものと思われる。 次に、冬眠する朝鮮縞リスの心臓をコラ-ゲナ-ゼ処理し、単離心室筋を得た。この細胞のNaーCa交換電流量を、細胞外液の温度を17℃から35℃に変化させながら測定し、同様の条件下のモルモット心室筋の結果と較べた。2種間に電流量の違いはなかったが、温度感受性に微妙な達いがあった。即ち、結果をアレニウスプロットすると、りすでは23℃を境にして、異なる傾きを持つ2直線でフィットされるのに対し、モルモットでは、1つの直線でフィットできた。モルモットのQ10値は3.6で、りすのQ10値は1.7(23℃以上)と9.2(23℃以下)であった。低体温でも活動が止まらないりすの心筋のNaーCa交換は、モルモットと較べ活性が生理的に異なることが解った。
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