モルモット単一心室筋細胞をオイルで隔絶した細胞内液と細胞外液の間に橋渡しし、内液に浸かった部分の膜を破壊し、この部分を介し細胞内潅流及び膜電位固定通電を行う独自の方法(オイル隔絶法)さらに改良し、ギガオ-ムの隔絶抵抗が得られるようにした。実効直列抵抗は40キロオ-ムで、高い時間解像度でナトリウム電流(Na電流)が記録できた。また効果的細胞内潅流のため細胞内のMgーATP濃度変化等で心筋のNa電流は顕著に変化することが観察できた。 当初は、当年度の研究目標を燐酸化による心筋Naチャネルの調節機構の解明としたが、記録した心筋Na電流は脱分極後に遅延無く単一指数関数的な活性化し、Naチャネルが複数の閉状態を経てから開くという従来の定説に矛盾した。そこでチャネルの代謝生御機構を分子レベルでより理解するためには、まず基本的なNaチャネルの電圧制御機構を解明するのが急務と考え、本年度は細胞内液のMgーATP濃度は0.5mMに調節して活性化機構の解析を行った結果、“心筋Na電流の活性化は一つの律速反応で決定される"という新仮説を証明できた。具体的には:(1)正常のナトリウム電流活性化はm^3ではなくm^1カイネティクスで記述できることを明らかにし、Journal of Physiologyに投稿し受理さた(現在印刷中)。(2)不活性化ゲ-トを想定し数学的に単離したNa電流活性化の解析では不適当なため、薬物で不活性化機構を除去し活性化を単離して、m^1活性化を数式にした。この数式は実際の活動電位の急速脱分極相を厳密に再現できた。(3)ゲ-ト電流記録を行い、チャネル蛋白の構造変化に伴うチャ-ジの移動がm^1仮説に一致する事を証明できた。(2)、(3)は現在投稿準備中だが、概略は昨年度の英国生理学会で既に表発している。
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