研究概要 |
視細胞ではホスホジエステラーゼが明時活性化されることにより電位が発生する。S-モジュリンは報告者の発見した、カルシウム依存的にホスホジエステラーゼの光感受性を制御する蛋白質である。本研究ではS-モジュリンについて以下の点について検討することを目的とした。(1)S-モジュリン作用におけるカルシウムの関与の機構。(2)光・電位変換機構におけるS-モジュリンの作用部位。(3)S-モジュリン蛋白質のアミノ酸配列の解析。(4)他の感覚器におけるS-モジュリンの存在の有無。 本研究によって以下の点が明らかになった。 (1)S-モジュリンはカルシウム結合蛋白質であり、カルシウムを結合すると疎水性基が露出し円板膜に結合して機能を発揮することが明らかになった(BBRC,186:411-417,1992)。 (2)S-モジュリンの作用部位はロドプシンのリン酸化を阻害する点にあること。光受容の後、ロドプシンはロドプシンキナーゼによってリン酸化を受ける。S-モジュリンはこのリン酸化を、カルシウム濃度依存的に阻害し、活性型ロドプシンの寿命をのばすことによってホスホジエステラーゼの光活性化の効率を高めることが明らかになった(Nature,in press)。 (3)精製したS-モジュリンに蛋白質分解酵素を作用させ、消化断片のアミノ酸配列から部分構造を推定し、既知の蛋白質のアミノ酸配列との相同性を比較検討した。その結果、S-モジュリンはビジニンやリカバリンと共に新しいスーパーファミリーを形成するカルシウム結合蛋白質であることが明らかになった(BBRC,186:411-417,1992)。
|