研究概要 |
虚血時に誘発される心筋異常興奮発生および異常興奮伝導に於けるβ2受容体の役割について検討するため、先ず、心筋興奮伝導の律速部位である房室結節でのβ2受容体を介する陽性変導作用の程度、および生理的条件下でβ1受容体を介する作用の優位性について、機能的意義を定量的に、イヌ摘出血液潅流房室結節標本および開胸生体位心標本を用いて検討した。心臓にはβ1のみならずβ2受容体も分布し、β1とβ2受容体サブタイプの分布が心組織によって異り、房室結節は固有心筋に比較してβ2受容体の割合が大きい。イヌ摘出血液潅流房室結節標本の後中隔(房室結節)動脈へのプロカテロ-ル(選択的β2刺激薬)動注によるAH間隔の短縮は同一動脈へのアテノロ-ル(選択的β1遮断薬)の持続注入で殆ど影響されなかったが、ICI 118,551(選択的β2遮断薬)により陽性変伝導作用の用量反応曲線は右へ有意に大幅に移動した。Tー1583(選択的β1刺激薬)およびノルエピネフリン(生理的交感神経伝達物質)の陽性変伝導作用はアテノロ-ルで右へ有意に大幅に移動したが、ICI 118,551では影響されなかった。イソプロテレノ-ル(非選択β刺激薬)およびエピネフリン(内因性カテコラミン)の陽性変伝導作用はアテノロ-ルでもICI 118,551でも右へ移動したが、アテノロ-ルでより大幅に移動した。更にイヌ開胸生体位心で、左心臓交感神経刺激による房室伝導時間の短縮(陽性変伝導作用)はアテノロ-ルの静注で有意に抑制されたが、ICI 118,551静注では影響されなかった。プロカテロ-ル静注による陽性変伝導作用はICI 118,551静注により有意に抑制されたが、イソプロテレノ-ル、ノルエピネフリン、Tー1583静注による陽性変伝導作用はアテノロ-ル静注でのみ有意に抑制された。以上の結果、房室結節にはβ1とβ2両受容体が併存し、共に房室結節伝導に機能的役割を果たしていることが示唆された。
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