研究概要 |
まず報告されている事実を確認するために、マウス皮膚2段階発癌実験系において完全プロモ-タ(TPA)と不完全プロモ-タ-(mezerein,RPA,合成ジアシルグリセロ-ル)の腫瘍形成に及ぼす効果を比較検討した。その結果,完全プロモ-タ-に比し形成された腫瘍の数はかなり少ないが不完全プロモ-タ-のみでも明らかな腫瘍形成が認められた。イニシエ-ション後最初の2回についてはTPAを塗布し、その後mezereinないし,PRAを塗布した群では不完全プロモ-タ-のみを塗布した群に比し腫瘍の数は増加したが顕著な差は見られなかった。これらの実験事実は従来報告されていた完全プロモ-タ-と不完全プロモ-タ-の差異が質的に明白なものでは無い可能性を示していると思われる。次に発癌プロモ-ションと密接な関係にあるとされているプロモ-タ-による表皮ODC誘導と炎症誘発作用について比較したところ、TPA,mererein,RPA,合成ジアシルグリセロ-ルのすべてがほぼ同様の時間経過でODCの誘導をおこした。TPA,mezerein,PRAは強力な起炎作用を示したが,合成ジアシルグリセロ-ルは明らかな起炎作用を示さず(少なくとも一回塗布では)、むしろ不完全プロモ-タ-の間で作用に解離が見られた。その他表皮細胞におけるPGE_2の生成,EGF受容体へのEGFの結合抑制作用などにも完全及び不完全プロモ-タ-の間で作用に差が見られなかった。完全プロモ-タ-も不完全プロモ-タ-もCキナ-ゼ活性化をおこすことが知られているが、表皮細胞におけるプロモ-タ-による内因性蛋白のリン酸化を比較したところ、TPA、mezerein,RPA,合成ジアシルグリセロ-ルいずれも同様のリン酸化パタ-ンを示し差を見い出すことができなかった。以上我々の研究結果は従来の報告とは異なり、完全プロモ-タ-と不完全プロモ-タ-の間に本質的な差は無いことを示唆しているし思われる。
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