研究概要 |
1)目的:endothelin(ET)の中枢神経系、脊髄後根神経節や星状神経節等の神経組織への存在も明らかにされ、さらに近年ET-3は脳および脊髄に比較的高濃度存在すると言われている。そこで本研究では、ET-3の交感神経節伝達に対する節前および節後作用を検討した。 2)方法:節後作用はin vivoの実験により、pentobarbital麻酔イヌで人工呼吸下に脊髄動物とし、心臓交感神経節への薬物の投与は、鎖骨下動脈を介してカテーテルより直接神経節に応用できるようにし、心拍数の変化を節機能の変化の指標として検討した。節前作用はin vitroの実験で、摘出星状神経節を用いて節前神経刺激によって遊離されるacetylcholine(ACH)量をHPLC-ECDにより測定し、また内因性thromboxaneA_2産生量を栄養液中のthromboxaneB_2蓄積量として酵素免疫法のキットにより測定した。 3)結果:星状神経節前刺激(0.25-4Hz)、DMPP(1-4mug)およびMcN-A-343(0.5-2mug)の節投与による拍数増加作用は、ET-1(0.05-0.2mug)およびET-3(0.5-2mug)の投与で用量依存的に抑制され、この抑制はET_A受容体遮断薬のBQ-123(20mug)で完全に拮抗されたが、cyclooxygenase阻害薬のindomethacin(5mg/kg)、電位依存性Ca^<2+>およびK^+チャネル遮断薬であるnifedipine(1mg)および4-aminopyridine(0.5mg)またATP依存性NK_+チャネル遮断薬のglibennclamideで影響されず、またhigh conductance Ca^<2+>依存性K^+チャネル遮断薬のcharybdotoxin(10mug)およびiberiotoxin(10mug)でも無影響であったが、low conductance Ca^<2+>依存性K^+遮断薬のapamin(30mug),scyllatoxin(10mug)およびd-tubocrarine(0.5mg)で拮抗した。節前神経刺激によるACh遊離量は、ET-3(10^<-9>-10^<-6>M)により用量依存的に減少した。類似の減少は、安定型thromboxaneA_2であるSTA_2(10^<-8>-10^<-4>M)でも認められたが、prostaglandinF_<2a>およびI_2では現われなかった。ET-3 によるACh遊離量の減少は、phospholipaseC阻害薬のneomycin(10^<-5>M)およびprotein kinase阻害薬のH-7(10_<-5>M)の投与では影響を受けなかったが、phospholipaseA_2阻害薬dexamethasone(10^<-6>M)およびmety1prednisoline(10^<-6>M)またはcyclooxygenaseC阻害薬のaspirin(10^<-3>M)およびindomethacin(5X10^<-5>M)により拮抗された。さらに減少は、thromboxaneA_2合成阻害薬のOKY-046(10^<-7>M)および同特異的受容体遮断薬のS-145(10^<-5>M)により拮抗されたが、prostaglandinE_<2a>特異的受容体遮断薬のSC-19220(10^<-5>M)では影響を受けなかった。ET-3(10^<-7>M)の応用により、栄養液中のthromboxaneB_2の蓄積量が増加し、この増加はOKY-046(10^<-5>M)およびindomethacin(5X10^<-5>M)の前処置により拮抗された。 以上の結果より、ET-1およびET-3は、シナプス後性には節後神経細胞膜のlow、conduction Ca^<2+>依存性K^+チャネルを活性化させることによって膜の過分極を促し、またシナプス前性には内因性thromboxaneA_2の産生・遊離の増強を介して、ACh遊離を抑制することにより、神経節伝達を抑制する。
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