研究概要 |
脊椎動物にはリポ酸を補欠分子族として持つ蛋白として4種類の蛋白が知られている。それらはグリシン開裂酵素系のH蛋白及び3種類のα-ケト酸脱水素酵素複合体のアシル基転移酵素成分(E2)である。今回,ウシH蛋白を用いて,そのリポ酸化の機構について研究し,以下の成果を得た。 1.H蛋白と各種のE2とアミノ酸配列を比較すると,H蛋白のリポ酸結合部位(Lysー59)周辺にはお互いよく保存されているアミノ酸が見出だされた(Glyー43,Gluー56,Gluー63,Glyー70)。これらのアミノ酸を部位特異的変異法によって置換し,その置換がリポ酸結合に及ぼす影響について調べた。その結果,これらのアミノ酸のうち,特にGluー56とGlyー70を置換した場合にリポ酸結合の効率が著しく低下し,リポ酸結合におけるこれらのアミノ酸の重要性が示唆された。 2.リポ酸結合の機構を詳しく調べるには,まずリポ受容体となるアポH蛋白を得る必要がある。我々は先にウシH蛋白の前駆体の全遺伝情報を含むcDNAを単離しているので,これから成熟型H蛋白を合成するプラスミドベクタ-を構築し,それを大腸菌に挿入して大量発現させた。大腸菌をリポ酸を添加した培養液中で成育させたときH蛋白はリポ酸の結合していないアポH蛋白(80%),リポ酸の結合したホロH蛋白(10%),それにオクタン酸が結合した異常型(10%)の3タイプが合成されていた。一方,リポ酸を結合したホロH蛋白(10%),それにオクタン酸が結合した異常型(10%)の3タイプのH蛋白をそれぞれ単一に精製し,ペプチドマッピングによってLysー59の修飾を確認した。 今後,このアポH蛋白をリポ酸の受容体として用いて,リポ酸転移酵素を精製し,その反応機構を解明する。
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