研究概要 |
1、PC12D細胞では、NGFのみならず、bFGF,EGFなどの刺激によっても神経突起が誘導された。これと相関するかたちでMAPキナーゼ活性が誘導される事実より、このキナーゼ活性の神経細胞分化への関与の可能性を考える筆者のこれまでの主張を強化した。またその内容を論文として発表した。 2、MAPキナーゼのイオン交換カラムクロマトグラフィーを行い、NGF,FGF,EGFやcAMPなどの刺激によってPC12D細胞内のどの様なキナーゼが活性化されるのかについて調べ、更に突起誘導との関連性を調べた。その結果、NGF,FGF,EGFにより同一のMAPキナーゼが活性化される可能性を生化学的に示唆した。その内容を論文として発表した。 3、NGF,cAMP,bFGF,EGFなどをPC12D細胞に数分処理すると、細胞周囲にアクチン染色に陽性のラッフルが形成される現象について観察し、(1)ラッフル形成は、神経突起誘導の初期反応と見られる事、(2)更にそれが蛋白質燐酸化を介して起こる事実を認め、論文として発表した。 4、スタウロスポリンは、4〜10nMで、培養幼鶏脊椎後根神経節およびPC12D細胞に対してNGFを添加したと同様に、神経突起の誘導が見られた。神経突起は、構造的に全く差が見られなかった。しかし、スタウロスポリンには、NGFの作用として知られる神経生存維持効果はなかった(論文として発表)。 以上、PC12D細胞を用いて、MAPキナーゼ活性化と神経突起誘導の関連性を示し、更に神経突起誘導の初期反応と位置づけられるラッフルの形成も蛋白質燐酸化を介して起こる事を示唆出来た。しかし、キナーゼ阻害剤スタウロスポリンにNGFと類似の突起伸張作用がある事の指摘は、大変興味ある発見ではあるが、前半に示した概念とは、矛盾し、総合して解釈出来ない今後の課題である。
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