研究概要 |
近年,われわれはラットおよびウシ副腎のアルドステロン合成酵素(シトクロムP-450aldo)の分離同定に世界を先駆け成功し,これを出発点として本研究すなわちヒトアルドステロン産生腫瘍における同ホルモンの過剰産生機序の解析に着手した。得られた成果を以下に記す。 1)哺乳動物におけるアルドステロンの生成様式は大別して2種あり,その一つはコルチゾール(またはコルチコステロン)産生酵素がアルドステロンの合成をも併せ行うウシ型,他の一つはコルチゾールとアルドステロンの産生が別種の酵素により行なわれるネズミ型である。先ずヒトがどちらの型であるか調べたところネズミ型であることが判明した(業績2)。2)つづいてアルドステロン産生腫瘍におけるアルドステロン合成酵素の発現量を調べたところ,正常副腎の数十倍に増加しており,したがって腫瘍におけるアルドステロンの過剰産生は本酵素の過剰発現にもとずくことが明らかになった(業績2,4)。3)ヒトと同様の合成形式を示すラットをモデル系として用い,アンギオテンシンIIによるアルドステロン生成促進の機序を調べたところ,遺伝子転写活性の増加によりアルドステロン合成酵素の発現量が増加するものと判明した(業績3,5)。4)同じくラットを用いてアルドステロン合成酵素とコルチゾール合成酵素(シトクロムp-450_<11β>)の副腎皮質内の局在を調べたところ,前者は球状層,後者は朿網状層に局在した。これら二酵素の局在の違いにより副腎皮質層別機能が生じるものと考えられる(業績6)。5)さらにアルドステロン合成酵素遺伝子の分離を試みてこれに成功し,そのプロモーター領域の構造を解析した(業績1)。今後は多数の症例を集めてヒトアルドステロン産生腫瘍における遺伝子転号活性の上昇機序を分子レベルで解析して病因の解明に資するとともに副腎皮質におけるアルドステロン合成の調節機構を明らかにしたい。
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