研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)の関節軟骨破壊に、滑膜由来のタンパク分解酵素が重要な役割を果している。酵素作用で障害された関節軟骨は、次いでパンヌスの侵襲によって高度な破壊へ進行すると考えられている。しかし、パンヌス組織の関節破壊への関与についてはなお議論がある。本研究では、matrix metalloproteinases(MMPs)のうちMMpー1(コラゲナ-ゼ),MMpー2(72KDaゼラチナ-ゼ),MMPー3(ストロムライシンー1),MMPー9(92KDaゼラチナ-ゼ)及びこれらのイニヒビタ-であるTIMPー1のRAパンヌスにおける免疫組織化学的局在を検討し、以下の新たな知見を得た。 1.パンヌスー関節軟骨接合部の関節軟骨細胞中には全てのMMPsが局在した。その陽性細胞の比率はMMPー1とMMPー3で高く、MMPー2やMMPー9陽性細胞は比較的少なかった。TIMPー1は約30%の症例でごく少数の軟骨細胞が染色された。 2.炎症細胞浸潤と血管増生を伴う活動性パンヌスでは、40%以上の症例でパンヌス細胞にMMPー1とMMPー2が局在し、MMPー3とMMPー9陽性症例は10%以下であった。線維化の強い非活動性パンヌスでは、いずれのMMPsも染色されなかった。また、TIMPー1は全ての症例でパンヌス細胞に陰性であった。 我々は、これまでMMPー1,2,3,9とTIMPー1について生化学的性質とRA関節組織における局在を検討し、関節軟骨破壊におけるこれら酵素の役割について報告してきた。それらに加えて、今回の新たな知見はこれらのMMPsがRAの関節軟骨細胞やパンヌス細胞によっても分泌されることを示しており、活動性パンヌスは軟骨の破壊に積極的に関与する可能性が示唆された。パンヌス組織が分泌する酵素とTIMPー1量はサンドイッチイムノアッセイ法で測定しているが、試料数が少ないため十分なデ-タが得られていない。分後、試料数を増やして検討する予定である。
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