研究概要 |
骨に原発する腫瘍の診断や悪性度の判定はかなり難しい。そこで本研究は腫瘍内の型別コラ-ゲン(I〜XI型)の局在と分布パタ-ンを型特異的抗体を用いて解析し、病理診断と悪性度の判定に寄与することを試みた。I〜VI型コラ-ゲンに対する型特異的抗体については既に作成済みであるので、今回はIX型、XI型コラ-ゲンをヒト肋軟骨から抽出し、塩析法とアガロ-スゲルクロマトグラフィ-で単離・精製した。この精製に設備備品(分光光度計)を用いた。次にIX型コラ-ゲン(HーMW)をSDラットに免疫し、型特異的抗体を作成した。XI型コラ-ゲンはきわめて微量で、若干のIX型コラ-ゲンの混入が避けられなかったので、アクリルアミドゲル電気泳動後、XI型コラ-ゲンの泳動バンドを切りとって、これをSCラットの免疫した。抗血清を免疫ブロット法で検定したところIX型コラ-ゲンに反応し、XI型コラ-ゲンには反応しなかった。そこで、SJL/Jマウスを用いてモノクロ-ナル抗体の作成を試みたところ、IgM分画の抗XI型コラ-ゲン抗体(α_3(XI)鎖を認識)を得た。しかし免疫ブロット法ではα_1(II),α_1(V),α_2(V)と交叉し、XI型コラ-ゲンのみと反応するエピト-プをもつクロ-ンは得られなかった。これまで作成された抗コラ-ゲン抗体を用いて骨肉腫(20例)、軟骨腫(10例)、軟骨肉腫(17例)の免疫染色を行った。骨肉腫では悪性度が高くなるにつれて各型コラ-ゲンの沈着が多様化するという分布特性を示した。軟骨腫や異型度1の軟骨肉腫ではII型コラ-ゲンが均等に染め出されるのに対し、IX型コラ-ゲンは不均等に分布した。軟骨肉腫は組織学的異型度の増加とともに本来の軟骨性(II,IX型)コラ-ゲンに代って、間質型(I,III,V型)コラ-ゲンが沈着し、VI型コラ-ゲンがびまん性に染め出された。 以上、骨腫瘍では型別コラ-ゲンの分布にそれぞれ特徴があり、とくにこの分布特性は悪性度の補助判定に有用であった。
|