研究概要 |
我々はこれまでにマウス老化アミロイドーシス発症の時期,程度の決定因子として沈着蛋白であるapoA-IIの一次構造が重要であることを示したが,同時に同一のapoA-II蛋白を持ちながらマウスの系統により沈着程度に差が存在し,apoA-IIの構造以外にアミロイドーシス発症を修飾する因子が存在することを明らかにしてきた。本研究の目的はこの修飾因子を分子遺伝学的手方を用いて検索する事であり,これによって老化アミロイドーシスの背後にある老化の実体にも迫ろうとするものであった。 2年間の研究によって明らかになったのは以下の点である。 1.apoA-IIの一次構造以外のアミロイドーシス発症を修飾し,促進する遺伝因子の数は1つで遺伝様式は常染色体優性であると推測できる。 2.個体の老化の速度がアミロイド沈着を修飾することが示唆される。 3.amyloidogenic apoA-II(Apoa2^c)とamyroid-resistant apoa-II(Apoa2^b)遺伝子を促進老化系統(SAM-P/1)と正常老化系統(SAM-R/1)の遺伝的背景に導入したcongenic mice を作成した。これらのcongenic mice を利用した研究の結果、apoA-IIの一次構造がHDLの代謝を規定している事が判明し、さらにApoa2^cがアミロイドーシス発症を促進することが確認された。 4.修飾因子の染色体上の位置の決定を目指すため、DNAマーカーとしてマウス染色体状に散在する内在性白血病ウイルス(MuLV)プロウイルスを利用しするゲノムマッピングシステムを確立した。 5.apoA-II mRNA量、合成量は加齢にともない急激に、しかもアミロイド沈着に先行して減少した。この結果はapoA-II geneのtranscriptionalな調節に始まる一連の代謝の変化が老化アミロイドーシスの引き金になっていることを示唆している。 今後は,MuLVとマイクロサテライトの系を利用して交配実験で得られたマウスのマッピングを行い,アミロイドーシス修飾因子や促進老化遺伝子の染色体上の位置の決定を目指す。
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