研究概要 |
1.1,2,10型コラーゲン遺伝子の細胞特異的ならびに分化特異的発現の証明:10型コラーゲン(以下「コ」)遺伝子は鶏胚椎体組織では2型「コ」遺伝子を優位に発現する小型軟骨細胞が肥大軟骨細胞への分化とともに出現(Stage36)し,Stage38では椎体中央部骨膜の軟骨組織内への侵入とともに活発な10型「コ」遺伝子発現の場が長軸方向へ広がり,侵入した血管周囲未分化間葉細胞の一部は強い1型「コ」mRNAのシグナルを持つ骨芽細胞への分化を示していた。明瞭に「コ」の産生細胞を同定し,そのシグナルの推移により細胞の分化動態を証明した。 2.実験的異所性内軟骨性骨化組織の作製法の確立と,同組織の「コ」の生化学的解析:生後1日目幼鶏脛骨より骨膜を分離採取し,同種幼鶏大胸節筋膜上に移植し,組織学的および生化学的に解析した。移植後5日目の移植片は膜性骨化と内軟骨性骨化を示す異所性骨軟骨組織を形成していた。移植後7日目の組織から「コ」を抽出し,50-60kDaの蛋白を精製し,Western blot法で10型「コ」と同定した。 3.実験的異所骨化過程における各型(1,2,10)「コ」遺伝子発現の解析:上述2つの方法で移植後5日目の細織像の中に10型「コ」mRNAの強いシグナルを示す多くの小型軟骨細胞を認め,Alcian blue弱陽性の非定型軟骨様組織を認め,移植後9日目では明らかな骨基質内にも10型「コ」mRNAの高いシグナルをもつ小型ないし肥大化軟骨細胞が散在していた。骨髄形成過程および骨折部仮骨過程においても,実験的異所性骨化過程にみられる早期に10型「コ」遺伝子を発現する非定型的軟骨細胞が重要な役割を担う可能性が示唆された。
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