研究概要 |
チカイエカ新宿株に有機りん剤抵抗性をもたらした解毒酵素carboxylesteraseーB(CEーB)の遺伝子増幅の機構を解くことを試みた。既に報告されいるネッタイイエカのesteraseB1遺伝子のエクソン内配列をプライマ-とし,チカイエカの約360bpのPCR産物を得た。この産物はネッタイイエカの塩基配列と完全に一致した。これをプロ-ブとして,6塩基認識制限酵素15種の中から1つまたは複数を新宿株ゲノムDNAに処理し,サザンブロット法を行い構造解析をした結果,CEーB構造遺伝子を含む約20kb配列が基本単位として増幅し,また,構造遺伝子の増幅度は殺虫剤感受性の戸塚株の500倍に及ぶことがわかった。新宿株の戸塚株に対するナフチルアセテ-ト分解活性と蛋白量はそれぞれ30倍と12倍であったことから,増幅遺伝子の発現に何らかの抑制機構が働いていることが考えられる。新宿株ゲノムライブラリ-より4つのCEーBクロ-ンを得た。この内,14kbp挿入クロ-ンはゲノミックサザンブロット法により得た増幅の基本単位の構造とよく一致した。 コガタアカイエカ富山株が獲得した有機リン系殺虫剤に対する数千倍以上の抵抗性の,カギを握るアセチルコリンエステラ-ゼ(AchE)感受性低下の機構を,遺伝子レベルで解析する試みをした。既に報告されている他種のAchE遺伝子およびアミノ酸配列よりPCRプライマ-を検討して独自に合成し,富山株ゲノムDNAより約1kbpのPCR産物を得た。これをプロ-ブとして富山株ゲノムDNAのサザンブロット法を行うと,制限酵素12種全ての場合で複数のバンドが認められた。さらに,富山株ゲノムDNAのミニライブラリ-よりAchE遺伝子を含む8.4kbpの断片をクロ-ニングできた。全塩基配列を調べたところ第1から第5エクソンが含まれていること,活性中心は種を越えて保存されている6アミノ酸と一致することがわかった。
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