研究概要 |
結核菌などの抗酸菌の細胞壁に由来するミコール酸含有糖脂質TTMを純化精製して,フォスファチジル・コリンのリポゾームに封入して動物の皮下組織中や腎被膜中に投与すると,注射局所に結核症の病理組織像に酷似する病変が生じることを明らかにした。即ち,チーズ様壊死をともなう膿瘍形成,マクロファージの浸潤,膿瘍を取り巻く結合組織の増勢が観察された。また,TTMリポゾームの腹腔内投与或は静脈内投与によって,腹腔内マクロファージが著しく活性化され,同系動物由来の腫瘍細胞を傷害する傷害性マクロファジーになることを明らかにした。更に,活性化マクロファジーから,過酸化水素,IL-1,TNF-αなどの炎症を惹起する物質が遊離されている事実を明らかにし,活性マクロファージが腫瘍形成の主役を為していることを示唆した。また,この処置は,腹腔内接種の種瘍(P815マストサイトーマ)やリンパ節内転移癌(Lewisの肺癌)に対し,in vivoで著しく抗腫瘍性を示し,担癌動物の延命することを示した。また,TTMリポゾームの腹腔内投与による腹腔滲出細胞中には,活性化マクロファージの出現と共に,γδ鎖の抗原レセプターを保有するT細胞が多量に出現することを見いだした。腹腔滲出細胞のリンパ球分画をFACScanを用いて分析したところ,このγδ型T細胞は,γδ鎖と共にαβ鎖の抗原レセプターをも発現していることが示唆された。また,このγδ型T細胞は,マクロファージを活性化して,サルモネラ菌の細胞内殺薗に向かわせる作用をもつことを明らかにした。
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