研究概要 |
ヒトに下痢を惹起する下痢原性大腸菌は、腸管病原性大腸菌(EPEC),腸管毒素原性大腸菌,腸管侵襲性大腸徴,腸管出血性大腸徴,腸管凝集粘着性大腸菌(EAggEC)の5つのカテゴリ-に大別されている。このうち,EPECとEAggECはHEpー2細胞あるいはHeLa細胞への粘着様式で分類される。 本研究では、タイと中南米で下痢症患者から分離された大腸菌について、HeLa細胞,プラスチック,ヒト小腸粘膜への粘着様式を走査電顕によって解析し、再分類を試みた。そのうちの数群についてはプラスミドと粘着遺伝子解析を行い、PCRによるDNA診断法を検討した。 ClassIEPEC:既報の如くHeLa細胞上でmicrocolonyを作る一群は、プラスチックに粘着するものと粘着しないものに区別された。いずれもヒト小腸粘膜の絨毛には強い塗着性を示したが,回腸のパイエル板M細胞には親和性を示さなかった。 EAggEC:既報の如くHeLa細胞上で凝集した粘着を示す一群は、Baudryら(1990)のDNAprobeで陽性を示すものと陰性結果をかえるものに区別された。上記のDNAprobe陽性株も、本研究で作製したヘマグルチニン遺伝子解析用PCR系で調べると中南米株とタイ株に分けられた。いずれも、プラスチックとM細胞に強い粘着性を示した。新しい病原体(候補)の特定を急いでいる。
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