研究概要 |
インフルエンザウイルスには動物血清により,感染阻害がおこる現象が認められ,それぞれの動物血清中に特異なインヒビターが含まれていると考えられている。本年度は種々の動物血清における血清レクチンを単離,精製しその性質を比較し,さらに本レクチンのひとつであるコングルチニンのCDNAをクローニングした。 1)種々の動物血清レクチンのインフルエンザウイルス阻害活性の比較ヒト,マウス,ラット,ラビットよりマンノース結合蛋白(MBP)をウシよりコングルチニンを精製した。これらのレクチンは,SDS電気泳動にて,単一バンドを示し,ほぼ完全精製されていた。本レクチンのマンナン結合力を125I-マンナン沈でん価で比較した。その結果,結合価は28-54単位/Mg蛋白であり,それぞれのレクチンに有意の差は認められなかった。一方インフルエンザウイルスに対する阻害活性は,ラビットMBPとコングルチニンが非常に強く,ラット,ヒト,マウスMBPは弱い活性が認められ,単なるマンナン結合力とは一致しなかった。コングルチニンの抗インフルエンザ活性は,I型,III型に認められ,本活性はC〓イオン依存性で,N-アセチルグルコサミンにより阻害された。又コングルチニンは,インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)に結合することを認めた。 2)ウシ-コングルチニンcDNAのクローニングウシ肝臓のcDNAライブラリーより,合成オリゴプローブを用いて,本遺伝子のcDNAをクローニングし,DNA及びアミノ酸配列を決定した。その結果20アミノ酸のシグナルペプチドをもつ371アミノ酸の蛋白が予想された。サザンブロットで本遺伝子は,シングルコピーであり,かつノーザンブロットで肝臓のみで本遺伝子の発現が認められた。
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